カーテンの向こう側
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 先週末、りょこたんと、渋谷のBunkamuraオーチャードホールで
チャイコフスキーの『白鳥の湖』を観てきた。

あまりにも有名。
学生の頃、オケ部に所属していた私は、曲は何度か聞いていたし、
メドレーなどでは、サビの部分を演奏したこともあったりして、
楽曲そのものには馴染みがあったのだけど、
バレエと一緒に見るのは、実は初めてだった。

「バレエの日までに、ぜったいに映画の『ブラックスワン』を見て!」

りょこたんに言われるがまま、2日前にDVDをレンタルし、映画を観た私。

映画をご存知ない方の為に、
『ブラックスワン』がどんな映画なのか、簡単に説明をすると、
ニューヨークのバレエ団に所属する若きプリマ、ニナは、
ある日、『白鳥の湖』のヒロインに抜擢されるチャンスを得るのだけれど、
オーデイションの場で演出家から言われたのは、
「躍るのが”白鳥”だけだったら、君を選ぶ」と言う非情な一言。
もともと優等生で清楚な彼女には、演出家が求める、官能的で淫らな
黒鳥(ブラックスワン)をどうしても演じられずにいたのだった。
(『白鳥の湖』は、ひとりのプリマが白鳥と黒鳥、両方を演じるキャスティングなのです。)
けれど、ニナのバレエへの執念も負けては居らず、
自身の中に潜む、プリマ同士の嫉妬、妖しさ、恨み、憎悪、性への憧れを解放しながら、
ラストでは、見事に黒鳥そのものへと自分を昇華する・・と言う、
妖艶でサスペンスチックな映画なのです。

で、こんな映画を予め見て来てしまったものだから、
幕が降りる度に、我々二人の間で繰り広げられる会話はどんどんエスカレート。

休憩時間のカフェ、生ハムにワイングラスを傾けながら、

「ひょっとして、踊らないで宮殿の脇でニコニコ座ってる人達って、
内心では、”失敗しろ~”って想念、必死で送ってるのかもよ?!」

「次の主役は絶対にこの私よ?みたいな?」

「”大きな白鳥”を演じた人の中に、今日のヒロインの代役とか居たのかな?」

「今頃、舞台の袖、カーテンの向こう側、すごいことになってるんじゃないの?」

「あのプリマの方、黒鳥を踊ってる時の方が生き生きしてたよね?」

多分、会場広しと言えども、こんなしょうもないことで盛り上がっている客って
他にいなかったんじゃないだろうか?

そして、あれこれ言いつつも、最終的に行き着いた、二人の合意は、

「人間、”きれい”な部分だけじゃなく、”黒い”部分をちゃんと表現出来る人の方が、
ずっと魅力的だよね?」

と言うこと。


あ、もちろん、バレリーナたちの、しなやかで均整の取れた美しい動きには、
何よりも、二人共感動の鐘が鳴り止まなかったことは言うまでもなく、

「ねえねえ、明日から、あの白鳥の礼の動きで”ありがとうございました”って
お店でお客さんに挨拶しようか?」

と、まことしやかに話しながら、懲りない二人は、会場を後にしたのでした。
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by hatsukoizitensha | 2014-01-13 22:32 | Contax Aria
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